レコード盤蓄音機の発明者エミール・ベルリナー(生誕日にはGoogleトップを飾った)が1898年に設立したクラシック音楽の名門レーベル、ドイツ・グラモフォンは21世紀に入ってクラブ空間で生演奏にDJ・VJが絡む新しいクラシック音楽受容の形「イエローラウンジ」を始めた。欧米各地での定期開催のほか、2012年には日本上陸も果たした。
そして2018年9月、「Yellow Lounge in Tokyo」第2回の開催が決定。昨年7月に新しいオーケストラO.E.T(オーケストラ・アンサンブル東京)の旗揚げ公演を成功させた若手指揮者の水野蒼生がキュレーターとして携わる。O.E.Tの掲げた「クラシックの入り口、開きます。」をそのままキャッチフレーズに使っているところに水野の思いと名門レーベルの期待の響き合いが覗える。
水野は2016年春から自身の主宰するライヴハウスでピアノ独奏を楽しむイヴェント「東京ピアノ爆団」で「クラシカルDJ」として活動し、聴衆を魅了してきた。
今回の抜擢の背景にはこうした水野の実績もあるだろう。既にspotifyで楽しめるプレイリストをイエローラウンジのサイトにアップ済み。ざっと聴いてみた印象を簡単にコメントすると・・・。
- 夜明けのダイアログ-バッハのゴルトベルク変奏曲を接着剤にラヴェル、ミヨー、ドヴォルザークなどが白み始めた空に舞う。
- それぞれの夜-生誕100年のバーンスタインの華やかにしてどこか寂しさ漂う「キャンディード」序曲で始まり、ひとの営みに付きまとう陽と陰の綾なしへの誘い。
- 歓喜へのプロセス-ベートーヴェンの交響曲第9番を軸にクラシックの音楽が語りかける多彩な感動の形を味わう。
- あなたが掴む光-人生は螺旋の山登り。険しい階段を歩み続けるひとに一筋の光を投げかける音楽の南十字星のまたたき。
どのリストも有名曲というキャンディばかりでなく「こういうのもうまいぞ」とばかりのピクルスが顔を出すのがいい。とりわけ水野が愛するコルンゴルトの作品はリストに濃密な翳の一瞬を与えている。
水野自身が解説するプレイリストに込めたメッセイジはこちらで。