アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

1/13「音と言葉の間」【3人の賢者が響き合わせた音楽と書】

音楽と書道パフォーマンスの融合自体は類例がありそうだが大体単発で彼らのように定期的活動を行う形は稀。まずはその点に好感を抱いた。

何より心を掴まれたのは書家の小杉卓が筆を運ぶ時の背中と膝の動きから伝わってくる集中力や気迫。筆の滑り、墨の跳ねまでとも一体化しているように見え、彼自体がひとつの作品であり、幻想を放つ美に思えた。生まれた書から放たれるエネルギー、メッセイジの強靭さは見ての通り。

もちろんバリトンの荒井雄貴、ピアノの新野見卓也の演奏もしっかり楽想の凹凸を描いた水準の高いもの。書との相互連関に留意しながら音楽として説得力のある表現を練り上げるには相当綿密なリハーサルが必要だろう。また演奏機会の稀なクルターグの作品を交えるなど選曲、並べ方も考えられていた。

このところ時勢を考慮して少人数によるパフォーマンスが増えたが正直「飛車角落ち」と見えちゃう場合もある。しかしこの3人は個々の技量の高さと同じ顔ぶれで継続してきた強みを発揮し、少人数で大きな感銘を見る側にもたらした。

※文中敬称略