アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

2023年9月18日(月・祝)/ シュッツ・コレギウム・ニッポン「命をうたう」

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気鋭の二刀流に誘われて

日頃あまり縁のない合唱の演奏会に足を運んだのは、ピアニストの松本陽さんからご案内頂いたから。

1998年生まれの松本さんは慶應義塾大学出身、子供の頃から舞台を踏み、十代以降数々のコンクールに入賞。以降多彩なフィールドで演奏活動を行い、コンサートやイベントの企画・制作にも取り組んだ。

加えて音楽家と予備校講師という異色の「二刀流」を続けている。

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25歳を迎え、更なる進化のためソロピアニストとしての活動は現在充電中だが、様々な楽器や声楽との共演で、持ち前の反射神経の良さと二枚腰のタッチを生かした表現を響かせ、演奏オファーはひっきりなしの売れっ子だ。

そして今回の演奏会では何と合唱団の一員として歌声を披露。

「三刀流」(?)に踏み出すのかはともかく、新しい引き出しを開いてみせた。

武満、三善それぞれの面白さ

この合唱団は慶応義塾大学コレギウム・ムジクム出身者を中心に4年前に結成された。

正直、合唱のうまい、へたは分からないが、現代日本の作曲家による合唱作品の重要作の違い、妙味がはっきり伝わったことは間違いない。

最も感銘が深かったのはやはり武満の「うた」。本公演で私は初めて作曲年代順に聴き、作曲者の詩選び、言葉と音楽の関係性の変化など想うところがあった。

音楽として「よくできている」のは三善作品。かつて石原愼太郎さんは、三善晃を「代表作のない作曲家」と断じて東京文化会館の館長から下ろした。確かに門下生の多さのおかげで業界人から過大評価されている要素はあるひと。

ただ、今回聴けた「地球へのバラード」は持ち前の緻密なスコアリングに言葉への共感が結びついた佳品で後世に遺る音楽の1つだと思う。

ありそうでない機会をくださった合唱団と松本陽さんに心より御礼申し上げる。

※文中一部敬称略

【参考CD】