アフターアワーズ

山椒系ちょくの切り抜き帖

メニューイン-坂入健司郎【ストリングスのヒューマニティ】

神童から大音楽家への道程 サー・ユーディ・メニューイン(1916-1999)は約70年の音楽人生の後半、指揮活動に力を注いだ。巧みなバトンテクニックは持ち合わせず、響きが整っていない録音も多い一方、生まれ持っての音楽の核心を見抜く洞察眼から導かれた、エ…

サファテ-スタンカ-鶴岡一人【「意気に感ず」を引き出す方法】

3イニングと2連投の奇跡 福岡ソフトバンクホークスのデニス・サファテ投手は日本シリーズMVPとシーズンMVPの2冠に輝き、加えて年度球界最高の功労者に贈られる正力松太郎賞も受賞した。外国人投手として「MVP2冠」は53年ぶりと報じられた。その53年前の1964年…

【ピアニストが真っ黒焦げ!?】2018/2「東京ピアノ爆団・第3回」ポスター+PV公開

クラシックコンサートポスターの「常識」を吹き飛ばす 先般のブログで指揮者の水野蒼生が主宰する新感覚、かつ正攻法のクラシックピアノライヴパフォーマンス「東京ピアノ爆団」を取り上げた。 choku-tn.hatenablog.com 公演を約2ヶ月後に控え、webポスター…

My Favorite Things:ハイフェッツのシューベルト【没後30年に寄せて】

2017年12月10日 ヴァイオリンの帝王、ヤッシャ・ハイフェッツ(1901-1987)の没後30年の命日。晩年の15年間引退生活だったので「昔の音楽家」と思われがちだが、実際はほぼ20世紀全体を生き抜いた。無敵のテクニック、音色のパレットの豊かさ、品の良いポルタ…

12/8服部龍二『佐藤栄作』刊行【「戦後最長不倒宰相」の初の本格評伝】

池田勇人と田中角栄の人気の影で 戦後最も長期間(2798日)首相の座にあり、日韓国交正常化や小笠原諸島と沖縄の返還を成し遂げ、1970年大阪万博も成功させ、退任後にノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作(1901-1975)。在任期間の長さ、業績の数々、功罪相半…

テミルカーノフが語るラフマニノフとロシア革命

もう好きなものしか指揮しない ロシア革命は悲劇 ロシアの重鎮指揮者で読売日本交響楽団名誉指揮者のユーリ・テミルカーノフ(1937-)が2018年2月の客演を前に読売新聞のインタビュー取材に応じた(サンクトペテルブルク、モスクワ支局花田吉雄、12月7日朝刊…

老政治家たちの悲しき願い【『金鍾泌証言録』と日韓関係】

日韓国交正常化に尽力した金鍾泌・元韓国国務総理の証言録の日本語版が新潮社から刊行され、その出版報告会に中曾根康弘元首相が出席、挨拶したという。 www.sankei.com 金鍾泌氏は韓国政界有数の知日家。日韓国交正常化の交渉過程で懸案だった日本の経済協…

My Favorite Things【園田高弘の弾くラヴェル】

作曲者ゆかりのひとから体得したフランス音楽 以前のブログで池辺晋一郎氏がFMで話した園田高弘さんのラヴェルの協奏曲にまつわる挿話を紹介した。 choku-tn.hatenablog.com 「ドイツ3B」のイメイジの園田さんだがパリでラヴェルと親交のあったマルグリット・…

11/16吉例顔見世大歌舞伎【仁左衛門、藤十郎、九代目幸四郎】

3度目にして歌舞伎座デビュー 夜の部を鑑賞。通算3度目の歌舞伎鑑賞だが過去2回はいずれも国立劇場(「元禄忠臣蔵」〔2006年10月-12月〕「大老」〔2008年10月〕)で歌舞伎座は初訪問。江戸古典、上方和事、新歌舞伎の傑作が一度に観られる演目にひかれた。 …

大相撲は屋台骨が全て腐っている【師匠、横綱、立行司】

「相撲ブーム」と言われた昨今。私は内心戸惑っていた。「土俵の充実」は全く感じられず、稽古不足のタポタポした力士が立ったそばから手をついている相撲ばかり。90日間「満員御礼」の内実はお寒い限りだった。そこに起きた土俵内外の騒動は大相撲の屋台骨…

My Favorite Things Special:Classical Music Disc Best10 2017

☆スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮、読売日本交響楽団/ブルックナー:交響曲第5番(Columbia)ブルックナー:交響曲第5番 ☆スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮、読売日本交響楽団/シューマン:交響曲全集(Columbia)シューマン:交響曲全集 ☆スタニ…

2018/2「東京ピアノ爆団」第3回【ライヴハウス+クラシックDJ+超絶ピアノ演奏】

あのO.E.Tの代表が仕掛ける音楽爆弾!? 2017年2月にオーケストラ・アンサンブル東京(O.E.T)を結成、クラウドファンディングにより7月の結成公演を大成功させた指揮者の水野蒼生。彼については何度かブログで取り上げた。 choku-tn.hatenablog.com choku-tn.h…

北朝鮮の出口を考える【求められる日米チャイナの連携】

穏健な独裁への体制変更が現実的 チャイナ(中国共産党)からの特使を慇懃に追い返した後、11月29日に北朝鮮(金正恩)は弾道ミサイルをこれまでより高く飛ばす試射を行った。仮に特使と面会後にやっていれば決定的にチャイナのメンツを潰していたから特使に…

日米チャイナのトップ会談の必要性【トランプ米国大統領来日・アジア歴訪】

インテリの嘲りに抗う安倍・トランプの好相性 政治的な利害、お互いが背負う両国の国益といった事柄以前に安倍晋三首相とトランプ米国大統領は相性がいいのだろう。それが証拠に他の主要国の首脳はトランプ氏とのコミュニケーション不全に陥っている。1980年…

「新・55年体制」の始まり【第48回衆議院議員総選挙のあと】

「政界・野党再編」は「民進党組合派」の伸長に終わった 2017年10月22日に投開票が行われた(一部地域では台風の影響により翌日開票)第48回衆議院議員総選挙の結果は与党の自民党(安倍晋三総裁〔首相〕)がほぼ公示前勢力を確保。連立相手の公明党は数議席…

福間洸太朗ピアノリサイタル@10/11サントリーホール

緊張から光彩陸離へ 2017年10月11日(水)サントリーホール19時開演 【プログラム】 リスト:オーベルマンの谷(巡礼の年第1年スイスより第6曲) ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 -休憩- ラフマニノフ:前奏曲op.3-2 ラフマニノフ:前奏曲op.32より第12番、第13番 …

【曲目構成の難しさ】瀬﨑明日香ヴァイオリンリサイタル@10/9紀尾井ホール

9月26日のブログで取り上げた瀬﨑明日香のリサイタルに足を運んだ。 choku-tn.hatenablog.com オールフルスロットルの難しさ プログラムはモーツァルトのヴァイオリン・ソナタK.296とリヒャルト・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタが前半、後半はラヴェルのツ…

なぜ「伊東」をやらないか【ジャイアンツ4位転落に思う】

2016年シーズンオフの怠慢のつけ 日本プロ野球のジャイアンツは11年ぶりのBクラスに終わり、セントラルリーグへのクライマックスシリーズ(以下CS)導入以来初めて進出を逃した。 www.sponichi.co.jp 今シーズンは前半戦で球団史上ワーストの13連敗を喫して…

瀬﨑明日香ヴァイオリンリサイタル@10/9紀尾井ホール

線が太くしかも敏捷な音楽の大型奏者 瀬﨑明日香はほんのり色気の漂う美音で骨格のがっしりした力感のある音楽が持ち味のヴァイオリニスト。作品全体の論理を見据える知性があり、しなやかな輪郭の解像度の高い響き。楽想の変化に反応してスパッと切り返す鋭…

【Hatena Blogお題より】秋の夜長に読みたい本

今週のお題「読書の秋」 春夏秋冬本を読んでいる身としては「読書の秋」で特別何か読もうとは考えないが、面白そうなので「読書の秋」と聞いて思い浮かぶタイトルを挙げてみた。 1.ジェフリー・アーチャー著、永井淳訳『ケインとアベル上・下』(新潮文庫) エ…

教育者が給食の目的を見失った結果【大磯町給食「食べ残し」】

国の未来を担う人材に出す食事ではない 神奈川県大磯町の町立中学校で給食の食べ残しが問題になっている。業者の納入しているデリバリー方式の給食の味が悪く、しかも異物が混入しているという体たらく。 headlines.yahoo.co.jp 画像を見る限り容器といい、…

範はチャンピオンズにあり【JAL選手権回顧】

日本のゴルフ受容史における画期的出来事 PGAツアーチャンピオンズ「JAPAN AIRLINESチャンピオンシップ」(成田ゴルフ俱楽部)はコリン・モンゴメリーの優勝で幕を閉じた。同ツアー初の日本開催試合の内容が激戦でしかも殿堂入り選手の優勝となったことは喜ば…

ショルティ没後20年に寄せて

「世界一有名な女性」とのほのかな縁 1997年9月5日、サー・ゲオルク・ショルティは休暇中の南フランスのアンディーブで心臓発作のため84年の生涯を閉じた。奇しくもダイアナ元英皇太子妃の葬儀の日。ショルティには後日開催の追悼コンサートのオファーが来てい…

人生初!応募メッセイジ採用【NHK-FM「きらクラ!」】

チャイコフスキーのオペラへの思いを込めて 毎週日曜14:00-15:50放送のクラシック音楽バラエティNHK-FM「きらクラ!」は気持ちのほぐれる楽しい番組。いくつかのコーナーの中にイントロ当ての「きらクラDON!」がある。8月27日の出題が大好きなチャイコフスキ…

羽田孜元首相逝去【「平時の羽田」の律義さ】

「伝説」をあえて否定した誠実な人柄 若き日の羽田孜元首相は小田急バスの観光課員だった。その時「歴史散歩」「文学散歩」などのバスツアーを羽田氏が考案したという「伝説」が政界進出後に作られた。サラリーマン出身の政治家は大体こうした伝説を利用する…

My Favorite Things:朝比奈隆のベートーヴェン【俵孝太郎のintoxicateコラムから】

日本人演奏家紹介のパイオニア かつてニュースキャスターやクイズ番組「マジカル頭脳パワー」の解答者としてお茶の間でおなじみだった政治評論家の俵孝太郎氏(1930-)はクラシック音楽ファン。単なる趣味に止まらず、日本のクラシック音楽受容史を録音の観…

My Favorite Things:近衞秀麿のドヴォルザークとアンダーソン

端正な佇まいに宿る屈折と哀感 近衞秀麿(1898-1973)は晩年、読売日本交響楽団と共演してベートーヴェンの交響曲3曲、シューベルトの交響曲第8(7)番、ドヴォルザークの交響曲第9番などをセッション録音した。この中で最も深い感銘を受けるのがドヴォルザ…

ところでどんな音楽家だったの?【近衞秀麿の「再評価」に思う】

ストーリーと音楽を巡って 以前にも取り上げた田代伶奈、水野蒼生、三好駿(順不同・敬称略)の鼎談。 nebulaph.com こんなやり取りが -引用開始- 水野 ヒットする人は「ストーリー」を持つアーティスト。みんな物語を持っているけど、例えばベートーヴェンが…

中内功に疼いた『野火』の記憶

日本文学史上屈指の傑作 8月14日、NHK-Eテレ「100分de名著」は大岡昇平の『野火』の2回目だった。『野火』は言わずと知れた日本文学史上の傑作。飢えが覆い尽くす戦場での人間の暗部、異様な心理を簡潔な文体によって抉り抜く。私見だがこれ一作で大岡昇平は…

張本勲の原爆の記憶

戦後72年なお残る原爆の影 2017年8月14日のNHK総合「ニュースウォッチ9」で東京都にある被爆者相談所を取り上げていた。高齢となり健康不安におびえるひと、長年逡巡した末に原爆症の認定を受けるひとなど悩める被爆者たちの声とそれを聞く相談員が描かれた…